日本ベトナム友好協会大阪府連合会/Pi日記2011年6月

Vちゃんと夜、フォーを食べに行った。

Vちゃんのバイクを受けとるために、会ったのだけれど、その前に夕ご飯を食べることになった。なにが食べたいと聞かれて即答したのは、フォー。

雨が降ってたから（雨季に入ったんだと思う）、すこし寒かったから、ファンティエットでは一度も食べたことがなかったから。

フォーはおいしくなかったけど、そのあとの10分くらいのドライブ（ヴィーちゃんは車をもっている）が楽しかった。ざあざあと降る大雨のなか、ゆっくりゆっくり、走った。ところどころ、道が浸水している。

「この車、だいじょうぶ？」
「だいじょうぶ。この車、泳げるから」
「あ、あの人、バイクから降りて、なにしてるんだろう。故障？」
「あれだよ」
「あれってなに」
「おしっこ」

雨がやまないからバイクはまた明日にしよう、となったけど、小降りになって、雨がやんだ。

Vちゃんの家に行って、バイクを受けとった。シートの開け方や、電気のつけ方や、ガソリンのいれる場所を丁寧に教えてくれた。

あしたからバイクで通勤できるんだ。

Vちゃんと朝カフェをした。

オーダーするとき、わたしが「珈琲」と言っているのに、Vちゃんは「なに食べる？」と言う。たまごとバインミーにする。

Vちゃんは、ちょっとだけ韓国の人っぽい雰囲気がある。大きくない目。くっきりの二重。グレーのTシャツ、白い腕時計、色あせたジーパン。まっすぐな視線。

家のことやバイクのこと、ベトナム語の先生のことなど相談にのってもらっていたら、突然ちいさな子どもがやってきた。Vちゃんがいろいろ話しかける。

「子ども好きなの？」と聞いたら「好き。おもしろいから。でも、清潔で、いい匂いでなくっちゃ」と言った。

その通りだと思った。子どもはそれでなくてもいい匂いだと思うから、お風呂あがりや、夜寝ているときは、どんなにいい匂いなんだろう。

Vちゃんは、わたしより歳がふたつ上だけれど、結婚していない。ベトナム人で、30歳をすぎて結婚していないと、ほんとうに四六時中、いろいろ言われると思う。人として扱ってもらえないようなことを言われるときもあると思う。

Vちゃんは「問題ないよ」と言って笑った。歯磨き粉のCMに出てくる人みたいに、笑った。

ビントゥアン省新聞は、月水金土の週4日発行される。

12ページくらいの、ぺろん、とした新聞。

きょう、配達の人が事務所に届けてくれたのだけど、今日の新聞といっしょに明日の新聞が含まれていた。

わたしがすごく驚いたら、ベトナム人のTさんが「そんなに驚くことなの？」と驚いたから、また驚いた。

土曜日の新聞は金曜日に発行されるのだそうだ。

新聞をひらくと、知らない単語がつぎつぎに出てくるから、暗い気持ちになるのだけれど、がんばってひらくようにしなくっちゃ。

未来新聞だし。

仕事でもそれ以外でも、コープマートに行くことが多い。1階は食材、2階は日常雑貨や文房具、書籍、電化製品、3階はフードコーナーになっている。

この3階に「nước rau má（ヌオックザウマー）」が売られていて、ときどき飲む。

ザウマー（南部ではラウマー）という野菜を（砂糖やミルクや塩をくわえて）ミキサーにかけたジュース。とても緑色。飲むとなぜか、ほてった脳がすーとする。からだもすこし涼しくなる。

日本ではあまり見かけないけれど、こちらではどこにでも売られている飲み物だ。ベトナム版青汁とも言われる。身体や肌によくて、若返り効果もあるらしい。それっぽい味っぽい感じ。1杯6千ドン（約25円）。和名は「ツボクサ」だと思う。

ちなみに市場で生のザウマー買うと、1キロ1万5千ドン（約60円）、ザルにいれて買うと4千ドン（約15円）くらい。

そういえば赤い食べ物も若返り効果があるらしいけれど、わたしはスイカも好きだ。ベトナムのスイカは甘くて安い。1キロ8千ドン（約30円）。半玉で2キロくらい。

今日から夏休みに入ったのか、子どもたちがコープマートにたくさんいた。遊園地ですか？と思うくらいに、ぎょっとする賑やかさだった。

若返りなんて一生知らなくてもいいという力を放って、ガラス製のスノーグローブに、きらきらと夢中になっていた。

ぐうぜん、通りかかった家に張り紙がしてあった。

「家をかします。全てそろっています」。

Tさんが張り紙のなかの番号に電話をしてくれる。

家のなかを見せてもらう。

ホテルで暮らそうと決めたのに、その決意がひらひらと翻った。